へバーデン結節の診断を受けたあなたやご家族の方は、今後の生活にどのような影響があるのか不安に感じているかもしれません。
へバーデン結節とは、指の関節に痛みや腫れ、こぶのような変形が生じる変形性関節症の一種です。日常生活の動作に支障をきたすこともありますが、正しい知識を持って適切に対処することで症状の進行を遅らせることができます。
本記事では、へバーデン結節を克服した筆者がへバーデン結節の原因や治療法、そして悪化を防ぐためにやってはいけないことなどを詳しく解説します。あなたやご家族の方が、今後の生活の質を維持するためのヒントが見つかれば幸いです。
へバーデン結節の診断をされた方とそのご家族の方へ
へバーデン結節と診断されたあなたやそのご家族の皆様、この記事を読んでいただきありがとうございます。 いつも通りの生活ができず不安を感じることも多いかと思います。私自身、へバーデン結節と診断されたときは、将来の生活に大きな不安を抱えました。
しかし、ご安心ください。日常生活に気をつけることである程度の進行予防や痛みの緩和が可能です。 実際、私も生活習慣の改善に取り組むことで、へバーデン結節の症状を克服することができました。
へバーデン結節について正しく理解し、症状の進行を遅らせる工夫をしていきましょう。 ご家族の方は、患者さんの心身の負担を軽減するためのサポートをお願いいたします。 諦めずに、希望を持って療養に励んでいきましょう。
へバーデン結節の原因
へバーデン結節の原因は未だ明確にはわかっていませんが、年齢とともに発生率が上昇することから加齢が関与していると考えられています。ただし、加齢が唯一の原因ではありません。その他にも、以下のような要因が関与していると考えられています。
- 仕事や趣味で手指を頻繁に使用する人も発症リスクを高めると考えられています。特に、裁縫や刺しゅう、農業関係の手仕事を業務として日常的に行う人に多く見られ、発生者の8割が主婦であるという報告もあります。
- 更年期以降の女性に多いことから、女性ホルモンの変化も発症に関与している可能性が指摘されています。
- 母娘間や姉妹間、家族内での発生が多く見られることから、遺伝的な要因の関与も疑われていますが、証明はされていません。
- その他、外傷や甲状腺疾患、糖尿病などの合併症もへバーデン結節の発症リスクを高める可能性が考えられています。
上記のような複数の要因が複雑に絡み合ってへバーデン結節が発症すると考えられていますが、さらなる研究が必要とされているのが現状です。
へバーデン結節でやってはいけないこと
次に、へバーデン結節でやってはいけないことを紹介します。
- 指先に負荷がかかるような作業を長時間行う
- 患部を温める
- 自己流で強くマッサージを行う
- 手持ちカバンを使う
- スマホを長時間使い続ける
- 飲酒や飲酒を過度に行う
- 過度にコーヒーなどのカフェイン摂取する
- 長時間運転する
- ストレスを溜める
- 痛みのある関節を無理に動かす
- 変形しないように反対方向に力を加える
以下の項目で詳しく確認していきましょう。
指先に負荷がかかるような作業を長時間行う
へバーデン結節がある方は、指先に負荷がかかるような作業を長時間行うのは控えましょう。例えば編み物やピアノ演奏などの動作は、指の関節に大きな負担をかけてしまいます。
これらの動作では、細かい指の動きを長時間続けたり、指を広げたり強く押さえつけたり、同じ指の動きを繰り返したりします。そうした負荷を指の関節に与え続けると、炎症が悪化したり変形が進行したりするリスクが高まるのです。
症状が急性期にある場合は、なるべく安静にして過度な負荷をかけないようにしましょう。どうしても家事などで使う必要がある場合は、こまめに休憩を取るなどの工夫が大切です。無理のない範囲で指を使うよう心がけることで、症状の悪化を防ぐことにつながります。
患部を温める
へバーデン結節の患部を温めることは避けましょう。多くの方が温めることで痛みが和らぐと思われがちですが、実は逆効果なのです。温めることで血行が良くなり、炎症が悪化してしまいます。また、痛みを感じにくくなるため、無理な動作をしてしまい症状が進行することもあるでしょう。
冷やすことで炎症を抑えられますので、痛みがひどい場合は冷却シップや保冷剤などで冷やしましょう。ただし、冷やしすぎると手の感覚が一時的になくなって、指を必要以上に動かしてしまう可能性もあるので注意してくださいね。
自己流で強くマッサージを行う
へバーデン結節の患部である指の関節を強くマッサージすることは避けましょう。自己流のマッサージは、変形の進行や痛みの増強のような悪影響を及ぼす可能性があります。もし、マッサージをしたい場合は、以下の点を念頭においておきましょう。
- 優しくゆっくりとしたタッチで行う
- 痛みを感じる場合は中止する
- 頻度を控えめにする
へバーデン結節に効果的なマッサージについては、以下のページで詳しく解説しております。
手持ちカバンを使う
へバーデン結節の方が手持ちカバンを使用し続けると、指への負担が増大し症状が悪化する恐れがあります。そのため、手持ちカバンは避け、肩掛けカバンやリュックに変更するのがおすすめです。
特にリュックは両肩で荷重を分散できるため、指への負担を最小限に抑えることができます。ただし、リュックの重量が重すぎると今度は肩や背中への負担となってしまうので、なるべく軽量のものを選ぶことが大切です。
普段使いのカバンを肩掛けやリュックに変更するだけでも、指の症状進行を遅らせる効果が期待できるでしょう。カバン選びの際は、指への負担を減らすことを意識してみてください。
スマホを長時間使い続ける
へバーデン結節がある方は、スマートフォンを長時間使い続けるのは控えましょう。スマホの操作は指や手首に負担をかけるため、小指や薬指の第一関節の変形や痛みを悪化させる可能性があります。
スマホ操作では、無意識のうちに同じ指の動作を繰り返したり、関節を曲げた状態を長時間続けたり、細かい指先の動きを強いられています。そのため、スマホに触れる時間が長いほど、指の関節への悪影響が大きくなるでしょう。
へバーデン結節の予防と悪化防止のために、スマホの使用時間は必要最小限に抑えることが大切です。やむを得ず長時間使う場合は、テーピングを装着したりするなどの工夫をしましょう。
へバーデン結節のテーピングに関する記事は以下のページでご覧いただけます。
喫煙や飲酒を過度に行う
ヘバーデン結節がある方は、喫煙や飲酒を過度に行うことは避けましょう。喫煙は血管を収縮させ、血流を悪くします。その結果、関節や軟骨への栄養や酸素の供給が滞り、症状が悪化する可能性があるのです。
一方、アルコールの過剰摂取は肝機能の低下を招き、関節の炎症を引き起こす尿酸の排泄を阻害します。また、飲酒により疼痛が和らぐため、無理な運動で関節に負担をかけてしまうことも。ヘバーデン結節の予防と症状改善のために、喫煙はやめ、節度ある飲酒を心がけましょう。
過度にコーヒーなどのカフェイン摂取する
へバーデン結節の方は、コーヒーなどのカフェイン飲料の摂取量に注意が必要です。カフェインには利尿作用があり、体内の水分や尿酸を排出する働きがあります。
医学的にカフェインとへバーデン結節の関係性が証明されているわけではありませんが、水分不足になってしまうことは体内の循環が悪くなり好ましくありません。
コーヒーや紅茶などの摂取量を一日一杯に決めるなど、調整するようにしましょう。
長時間運転する
へバーデン結節がある方は、長時間の運転は控えましょう。ハンドルを握り続けることで、指の関節に負担がかかります。特に発症初期は安静にすることが大切です。
もしどうしても長時間の運転が必要な場合は、以下の対応をしてみてください。
- ハンドルカバーを使って握る力を分散させる
- こまめに休憩を取り、指を休める
- 痛みが強い場合は運転を中断し、安静にする
へバーデン結節の方が心がけるべきことは、とにかく関節への負担をできるだけ減らすことです。長時間の運転は避け、症状に合わせた対処を心がけましょう。
ストレスを溜める
ストレスは慢性的な炎症反応を引き起こし、へバーデン結節の症状を悪化させる可能性があります。ストレスによって指の関節の腫れや痛みが増強してしまうこともあります。
へバーデン結節の症状を緩和させるには、ストレスコントロールが欠かせません。自分なりのストレス発散法を見つけ、心身の健康バランスを保つよう心がけましょう。症状が気になるときは無理をせず、ゆっくり休養を取ることも大切です。
痛みのある関節を無理に動かす
ヘバーデン結節で指関節が変形し、痛みを伴っている場合は、その関節を無理に動かすことは避けましょう。痛みのある関節に負荷をかけ続けると、さらなる炎症や変形を招く恐れがあります。
痛みが強いときは、患部を冷やしたり、消炎鎮痛剤を服用するなどして、炎症を抑えることが大切です。また、日常生活では、痛みのある関節への負担を減らすため、テーピングの使用や動作の工夫を心がけましょう。無理に関節を動かすことなく、痛みに耳を傾けながら、適切に対処していくことが重要です。
ヘバーデン結節のテーピングの巻き方は、以下のページで詳しく紹介しています。
変形しないように反対方向に力を加える
ヘバーデン結節による指の変形が気になるあまり、反対方向に無理やり力を加えることは避けましょう。無理に力を加えると、かえって関節を傷めてしまい、変形の進行につながってしまう可能性もあるのです。変形した関節をそっと扱い、過度な負荷をかけないようにすることが大切です。 痛みのある関節は安静にし、無理のない範囲でゆっくりと動かすようにしましょう。変形の進行を遅らせ、痛みを和らげることにつながります。
へバーデン結節の治療法
次に、へバーデン結節の治療法について解説します。
- 保存療法
- 薬物療法
- 手術療法
大まかに分けると上記の3つの方法が用いられます。基本的にはまずは保存療法をしながら様子を見ていくことが多いです。かかる医療機関としては、整形外科や接骨院などが挙げられます。
保存療法
保存療法とは、手術を行わない治療法のことです。 へバーデン結節の保存療法には、安静・固定、冷却療法、運動療法、次の項目の薬物療法などがあります。
安静・固定療法では、痛みのある関節をテーピングやサポーター、外固定(金属のリング等)で固定(安定)することで、炎症や痛みの緩和を図ります。
冷却療法では、患部を冷却シートやアイシングで冷やすことで、痛みや腫れを軽減します。 運動療法では、手指の柔軟性や筋力を維持・改善するためのストレッチや運動を行い、関節可動域の維持、変形の予防を目指します。
初期段階では、安静・固定と冷却療法を中心に行うことで炎症をコントロールするのが一般的です。症状が落ち着いてきたら、徐々に運動療法を取り入れ、手指機能の維持・改善を図ります。
日常生活では、関節への負担は控えめにしましょう。重いものを持つ、力仕事をする、長時間のPC作業など手指への負担が大きい動作は避けることが大切です。
保存療法で効果がない場合には、後述する手術療法が適用されることが多いです。
薬物療法
へバーデン結節の治療には、前述したアイシングやテーピングに加え、痛みや炎症を抑える薬物療法が併用されることが多いです。急性期で痛みが強い場合にはステロイド注射を行います。しかし、ステロイド注射は軟骨萎縮などの副作用を起こす可能性があるため、頻回に行うことはできません。
薬の種類 | 主な薬剤名 | 特徴 |
非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs) | ロキソプロフェン、セレコキシブなど | 痛みと炎症を抑える胃腸障害などの副作用に注意 |
痛み止め | アセトアミノフェン | 痛みを和らげるNSAIDsより胃腸への負担が少ない |
漢方薬 | 越婢加朮湯(ツムラ28)、防已黄耆湯など | 痛みと炎症を抑え、血行を改善副作用が比較的少ない |
ステロイド注射 | トリアムシノロンなど | 軟骨萎縮などの副作用を起こす可能性があるため、頻回に行うことはできない |
これらの薬は内服薬が中心ですが、局所に塗布する外用薬もあります。症状に合わせて医師が適切な薬を選択・処方しますので、自己判断で服用することは避けましょう。
ヘバーデン結節に有効な漢方薬については以下のページでより詳しく紹介しています。
手術療法
手術療法は、保存的治療や薬物療法で十分な効果が得られない場合に検討されます。手術の主な目的は、変形や痛みの改善、機能の回復などです。
代表的な手術療法には、関節形成術(変形した関節面を整えて痛みを和らげる)、人工関節置換術(変形した関節を人工関節に置き換える)、関節固定術(関節を固定して痛みをなくす)などがあります。 手術療法は侵襲性が高く、手術のリスクとメリットを十分に検討する必要があるため、医師によく確認することが大事です。また、手術後のリハビリテーションも重要です。 手術を検討される際は、専門医としっかり相談しましょう。
ヘバーデン結節の最新治療方法については、以下のページで解説しております。
へバーデン結節は放置するとどうなる?
へバーデン結節を放置すると、指の第一関節(DIP関節)の変形がさらに進行します。関節の動きが悪くなるだけでなく、痛みも出現・増強し、最終的には日常生活に支障をきたすようになります。例えば、ものをつかむことやボタンをかけるといった動作が困難になってしまうのです。
ヘバーデン結節は、放置しておくと10年ほどの期間をかけてゆっくりと変形が進行します。また、徐々に他の指にも症状が広がっていくことが多いです。
初期の段階では、腫れや皮膚の赤み、痛みなどの症状が見られます。数年かけて変形が進み、最後は側方変異(横に曲がる)や屈曲した状態で関節が固まってしまいます。
炎症を放置しておくと、骨の変形に進んでしまい、そうなると元に戻すことは難しくなります。痛みが出始めた早い段階から、炎症を軽減させる治療を行うことが大切です。
ヘバーデン結節を悪化させない日常生活の知恵
へバーデン結節の進行を止める方法は確立されていません。ただし、関節に負担をかけないように固定をすることや、負担のかかる仕事を避けることで悪化防止につながります。
また、糖分の多い食事や女性ホルモンの減少も影響している場合があるため、食事管理や大豆系の食品の摂取も有効と言われています。女性ホルモンを補う食材、腎臓の働きをサポートする食材、骨を強くする食材などを積極的に取るようにして、健康的な食生活や十分な睡眠時間を確保することも大切です。ストレスも症状悪化の要因にもなります。服用薬をうまく利用して指のことはあまり考えないようにしながら上手にストレス発散できる方法を見つけることも大切ですよ。
やってはいけないことに気をつけて向き合っていこう
へバーデン結節は指の第一関節に多く発症する変形性関節症の一種です。原因は未だ不明ですが、加齢による関節軟骨の変性や遺伝的要因や手指への負担、ホルモンバランスの変化などが影響していると考えられています。
本記事では、へバーデン結節の方がやってはいけないことについて詳しく解説しました。指への負荷が大きい作業や指先に力が加わってしまうこと、過度な飲酒やストレスの蓄積もよくありません。
生活習慣を見直し、食習慣や睡眠の質など、規則正しい生活を取り戻すきっかけとしてとらえ、前向きにへバーデン結節と向き合っていきましょう!この病気は完治が難しいと言われていますが、適切な治療と日常生活の工夫によって症状の進行を遅らせ、快適な生活を取り戻すことができます。この記事で紹介した内容を参考に、無理のない範囲で指への負担を減らし、健康的な生活を送るように心がけてみてくださいね。
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