ヘバーデン結節に悩む方やそのご家族にとって、最新治療の登場はとても喜ばしいニュースです。今回紹介する動注治療やPRP療法は、関節の可動域改善や痛みの軽減、炎症の抑制や組織の修復促進などの効果が期待できます。
私自身もヘバーデン結節に悩まされた経験があります。最新治療は課題もありますが、今後さらに研究が進むことで、多くの患者さんが笑顔を取り戻せる日が来るかもしれません。最新治療を上手に活用しつつ、ご自身に合った方法を見つけていってくださいね。
本記事では、ヘバーデン結節の最新治療である「動注治療」と「PRP療法」について詳しく解説します。 これらの治療法の効果と課題、気になる費用もお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
【へバーデン結節の最新治療】動注治療
ヘバーデン結節の新しい治療法として注目されているのが「動注療法」です。
この治療は、点滴で使用する極めて細いチューブを用いて、手首の動脈に薬液(イミペネム・シラスタチン)を注入し、痛みの原因となる異常な血管(モヤモヤ血管)を撃退します。 ヘバーデン結節は、人間の身体には生命を維持するのに欠かせない正常な血管だけでなく、病気の原因になってしまうモヤモヤ血管もできてしまうことが最近になってわかってきました。動注療法では、このモヤモヤ血管ができている場所にピンポイントで薬液を注入し、減少させることで高い除痛効果を得ることができます。
動注療法は、ヘバーデン結節の痛みの原因となるモヤモヤ血管を直接ターゲットにした最先端の治療法として期待されています。しかし、高い除痛効果と軽快率、そして安全性を示す一方、普及における課題もあるのが現状です。
ここからは、動注治療について治療の流れや効果、課題、費用を解説します。
問診・診察
へバーデン結節の動注治療を受ける際には、まず医師による問診と診察が行われます。問診では、症状の経緯や痛みの程度、日常生活の支障、既往歴などが聞かれます。
診察では、指の腫れや変形、圧痛の有無などを丁寧に確認していきます。レントゲン検査やエコー検査、MRIで関節の変形や骨棘の程度を評価したり、超音波検査で炎症の有無を確認したりすることもあります。
これらの問診と診察、検査の結果をもとに、動注治療の適応があるかどうかを総合的に判断します。治療に伴うリスクやメリット・デメリットについても十分に説明を受けた上で、自身が治療を受けるかどうかを決めていくことが重要です。
動注治療
動注治療では、まず手首に局所麻酔を行います。次に、点滴に用いるような柔らかくて細いチューブを血管内に挿入していきます。
チューブが血管内にあることをエコーで確認したら、薬液を注入します。薬液が各部位に届いた時には、以下のような反応が起こることがあります。
- 熱さを感じる
- ピリピリする
- 違和感がある
- 軽い痛みがある
ただし、これらは一時的なもので治療上問題ありません。 動注治療自体は、わずか5〜10分ほどで終了します。
【へバーデン結節の最新治療】動注治療の効果
動注治療は、ヘバーデン結節の病変部に直接薬剤を注入することで、症状の改善を図ります。この治療法の最大の特徴は、全身への影響を最小限に抑えつつ、病変部に高濃度の薬剤を届けられることです。
これまでの研究では、動注治療によってヘバーデン結節の疼痛や腫脹、可動域制限などの症状改善効果が報告されています。
一般的な整形外科やペインクリニックで行われているステロイド注射やブロック注射とは大きく異なり、高い除痛効果が得られるのも特徴です。8割以上の患者さんにおいて、一時的な効果ではなく症状の軽快に向かっているとのデータもあります。
国内ではすでに5,000人以上の方がこの治療を受けており、ほとんど副作用の報告がないことから、安全性の高い治療法と言えるでしょう。
ただし、動注治療の効果には個人差があり、すべての患者に同様の効果が得られるわけではありません。また、効果の持続期間も症例によって異なるため、継続的な経過観察が必要なことは念頭においておきましょう。
【へバーデン結節の最新治療】動注治療の課題
動注治療は、ヘバーデン結節に対する最新の治療法の一つですが、いくつか課題もあります。
まず、動注治療を行える施設が限られているという点が挙げられます。動注治療を実施するためには、専門的な知識と技術を持った医師や設備が必要となります。そのため、どこの医療機関でも受けられるわけではありません。
また、どんな病気や疾患にも言えることですが、治療の効果には個人差があるという課題もあります。動注治療が奏功する方もいれば、あまり効果が実感できない方もいらっしゃるでしょう。
さらに、動注治療の長期的な効果については、まだ十分なエビデンスが確立されていないのが現状です。治療後の経過観察を継続し、効果の持続性などを慎重に見極めていく必要があるでしょう。
加えて、動注治療は保険診療ではなく自由診療であるという点も課題の一つです。治療にかかる費用は自己負担となります。
副作用の面では、動注治療はほとんど副作用がないとされていますが、稀に注射した部位に内出血を起こしたり、使用する薬剤に対するアレルギー反応がみられたりすることがあります。
今後、動注治療のさらなる改良と、長期的な有効性と安全性の検証が期待されます。一方で現時点では、上記のような課題についても理解しておくことが大切だと言えるでしょう。
【へバーデン結節の最新治療】動注治療の費用
ヘバーデン結節の動注治療の費用は、施術内容や医療機関によって異なりますが、だいたい次のような相場となっています。
治療内容 | 費用目安 |
片側(片手)の治療 | 30,000円前後 |
両側(両手)の治療 | 40,000円前後 |
動注治療は、指の関節内に直接薬剤を注入する方法のため、使用する薬剤の種類や背術範囲の広さによっても費用が変動します。また、症状の程度や治療回数によっても総費用は異なってくるでしょう。
通常、動注治療は1〜3ヶ月の間隔で数回行うことが多く、その場合の総費用は10万円以上になることがあります。また、ヘバーデン結節の動注治療は保険適用外のため、全額自費診療となる点には注意が必要です。
【へバーデン結節の最新治療】「PRP療法」
次に、二つ目のへバーデン結節の最新治療「PRP療法」を解説していきます。
PRP療法とは、「多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma)」を用いた最新の治療法のことを指します。患者自身の血液から多血小板血漿(PRP)を精製し、損傷した関節内に注入する治療法です。
血液に含まれる血小板には止血作用だけでなく、血小板に含まれる成長因子には組織を修復する能力もあります。PRPにはさまざまな成長因子が含まれており、関節軟骨の修復や炎症の鎮静化に役立つと考えられています。
ここからは、PRP療法について詳しく解説していきます。まずは具体的な診察内容を確認しておきましょう。
問診・診察
ヘバーデン結節に対する最新治療の一つであるPRP療法でも、まず医師が問診と診察を行います。問診では以下のような点を確認します。
- 結節の出現時期や経過
- 痛みの程度や生活への支障
- 既往歴や内服薬
- 治療への希望や不安な点
診察では、指の関節を中心に以下の項目をチェックします。
診察項目 | 内容 |
視診 | 結節の大きさ、色調、皮膚の状態 |
触診 | 結節の硬さ、可動域、圧痛 |
レントゲン | 関節の変形、骨棘、関節裂隙の狭小化 |
血液検査 | 炎症反応、血小板数 |
PRP療法では患者さん自身の血液を使用するため、血液検査で血小板数などを確認します。医師はこれらの情報を総合的に判断し、PRP療法が適しているかどうかを見極めます。
PRP療法
PRP療法は以下のような工程で行われます。
- 患者さんの腕から約15~20mlの血液を採取
- 採血した血液を遠心分離機にかけ、赤血球・白血球とPRPに分離
- 分離したPRPを患部(ヘバーデン結節部位)に注射
PRPには、成長因子(PDGF、TGF-β、VEGF、EGFなど)が豊富に含まれています。これらの成長因子により、炎症の抑制や軟骨の修復、疼痛の緩和が期待できます。
治療後数日間、炎症(痛み、熱感、赤み、腫れ)が起こる可能性がありますが、医師から指示された後療法をよく守ることで回復していく場合が多いです。
【へバーデン結節の最新治療】PRP療法の効果
次に、PRP療法の効果を見ていきましょう。
PRP療法は、ヘバーデン結節の痛みを和らげ、機能を改善する効果が期待できます。PRP中の成長因子が関節軟骨の修復を促進し、変形の進行を遅らせる可能性もあります。
実際、PRP療法を受けた患者さんの多くが、痛みの軽減、可動域の改善、こわばりの改善などの効果を実感しています。
また、海外の研究でも、PRP療法によって痛みが軽減し、ステロイド注射と比較してその効果が長く続いたことが報告されています。また、痛みだけでなく、機能や握力、関節可動域といった項目も改善が見られました。
PRP療法の効果は注射後1〜2週間ほどで現れ始め、2〜3ヶ月程度持続します。より長期的な効果を得るためには、症状に合わせて複数回の治療を行うことが推奨されています。
なお、これまでのところ、PRP療法による重大な合併症は報告されていません。
【へバーデン結節の最新治療】PRP療法の課題
PRP療法はへバーデン結節の最新治療として注目されていますが、いくつかの課題も指摘されています。
まず、PRP療法の臨床研究は対象患者数が少ないことが挙げられます。PRP療法の有効性を確実なものとするには、より多くの症例での検証が求められているのが現状です。
また、PRP製剤の精製法や濃度、注射回数や頻度が施設によってまちまちであることも課題です。
さらに、PRP療法の効果が対象患者さんの関節変形の程度によってどの程度異なるのかについても、まだ十分なデータが得られていません。
加えて、PRP療法による軟骨再生の有無を画像で評価した研究は少なく、今後の検討課題と言えるでしょう。
最後に、PRP療法は現時点では自費診療であり、費用面でのハードルの高さも課題の一つです。将来的な保険適用が望まれます。
このように、PRP療法の課題はまだ多く残されていますが、今後の研究の進展によって克服されていくことが期待されます。
【へバーデン結節の最新治療】PRP療法の費用
PRP療法は自由診療のため、基本的には全額自己負担となります。ただし、初診料や再診料は保険適用となる場合が多いです。
PRP作製キットの費用は医療機関によって異なりますが、およそ5万円程度が相場です。1回の採血で作製したPRPを用いて、1週間おきに3回の注射を行うことが可能なことが多いです。
1クールで3〜6回程度の注射を行うことが多いため、トータルの費用としては20万円〜30万円程度が目安となります。ただし、へバーデン結節の進み具合や個人差によって必要な回数や頻度は異なるため、事前に担当医とよく相談しましょう。
へバーデン結節の最新治療を導入している主な施設
現在、ヘバーデン結節の最新治療を行っている主な施設は以下の通りです。
動注治療を導入している施設
施設名 | 所在地 | 公式サイトURL |
仲野整形外科 スポーツ・ウェルネスクリニック | 〒251-0021神奈川県藤沢市鵠沼神明5-14-15 | https://nakano-seikei.jp /arterial_injection_therapy.html |
ただおクリニックプラス | 〒194-0035 東京都町田市忠生2丁目28-7 ロイヤルヒルズK1階 | https://machida-varix.jp/blog/ %E3%83%98%E3%83%90%E 3%83%BC%E3%83%87%E3% 83%B3%E7%B5%90%E7%AF %80%E3%80%80%E5%8B%9 5%E6%B3%A8%E6%B2%BB% E7%99%82 |
わせだ整形外科 | 〒201-0002東京都狛江市東野川2-20-5エストヴィアン1F | https://waseda-foot.jp/arterial_injection _therapy.html |
オクノクリニック | 〒107-0062東京都港区南青山5-6-26 青山246ビル3F ほか、横浜、関西、九州をはじめ 日本全国計10医院 | https://okuno-y-clinic.com/ |
西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック | 〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田3丁目4−5 毎日インテシオ2F | https://www.west-umeda-clinic.com/arterial_injection/ |
PRP療法を導入している施設
施設名 | 所在地 | 公式サイトURL |
まえだ整形外科・手のクリニック | 〒167-0022東京都杉並区下井草1-6-2 | https://maeda-seikei.jp/ |
ふどう整形外科クリニック | 〒666-0017兵庫県川西市火打1-16-6オアシスタウンキセラ川西2F | https://fudou-ort.com/ |
北7条ごうだ整形外科 | 〒060-0007 札幌市中央区北7条西24丁目1-24 | https://sapporo-goda.com/ |
各施設の詳しい情報は、公式サイトをご確認ください。ご自身の症状に合わせて、最適な治療法を選択できるよう、担当医とよく相談しながら進めていくことが重要です。
まだ限られた施設でしか行われていませんが、上記の施設は一部です。今後ヘバーデン結節に悩む方々が気軽に最新治療を受けられるよう、さらなる普及が期待されます。
上記施設へ詳細をお問い合わせの上、ご相談されることをおすすめします。
まとめ
本記事では、ヘバーデン結節に対する最新治療法として、動中治療とPRP療法を紹介しました。
治療法 | 効果 | 課題 | 費用 |
動中治療 | 関節の可動域改善、痛みの軽減 | 長期的効果は未知数 | 1回3〜5万円程度 |
PRP療法 | 炎症の抑制、組織の修復促進 | エビデンスが少ない | 1回20〜30万円程度 |
どちらの最新治療法も保険適応ではなく自費ではありますが、ヘバーデン結節に悩む方にとって、最新治療の登場はとても喜ばしいニュースです。動中治療やPRP療法は、関節の可動域改善や痛みの軽減、炎症の抑制や組織の修復促進などの効果が期待できます。
どちらの最新治療も自費診療となりますが、「あれこれ治療を試したけれど良くならない」「手術は受けたくない・踏み切れない」といった方には、一つの選択肢と言えるのではないでしょうか。
私自身もヘバーデン結節に悩まされた経験がありますが、当時の適切な治療を受けたことで今は痛みなく過ごせています。最新治療はまだ課題もありますが、今後さらに研究が進むことで、多くの患者さんが笑顔を取り戻せる日が来るかもしれませんね。
ヘバーデン結節と上手に付き合いながら、諦めずに治療に取り組むことが大切だと思います。最新治療を上手に活用しつつ、ご自身に合った方法を見つけていってください。
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