私は、50代でブシャール結節と同じ症状のへバーデン結節を発症しました。診断を受けた時はショックでしたが、そこから色々な情報を集め、医師の指導のもと適切な治療を行うことで、日常生活に支障がない状態まで回復しました。本記事では、ブシャール結節の特徴、やってはいけないことや原因、治療法について紹介します。
ブシャール結節ってどんな病気?
ブシャール結節は、指の第二関節(PIP関節)の変形を主な症状とする疾患です。
この病気は、関節の軟骨が摩耗することによって発症し、関節の変形、腫れ、屈曲などが起こります。さらに、骨の変形が進行すると、皮膚を刺激して爪側に水ぶくれのようなでっぱり(粘液嚢腫・ミューカスシスト)ができることがあります。
ブシャール結節は、特に40代以上の女性に多く見られる疾患で、痛みの症状は個人差が大きく、中には全く痛みを感じない方もいるようです。
へバーデン結節との違い
ブシャール結節とへバーデン結節は、ともに指の変形性関節症に分類される疾患ですが、発症する関節が異なります。
疾患名 | 発生部位 | 症状 |
ブシャール結節 | 指の第二関節(PIP関節) | PIP関節の変形、腫れ、屈曲 |
へバーデン結節 | 指の第一関節(DIP関節) | DIP関節の変形、腫れ、屈曲 |
両者の違いは、症状が現れる関節の違いと頭に入れておきましょう。私は指の第一関節だったのでへバーデン結節でした。
へバーデン結節については、下記の記事で詳しく解説しています。
『ヘバーデン結節ってどんな病気?原因や治療法・気になる疑問を徹底解説』
関節リウマチと間違いやすい病気
関節リウマチとブシャール結節は、どちらも指の関節に変形や腫れを生じる疾患であるため、症状だけでは見分けがつきにくい場合があります。しかし、両者は病因や治療方針が大きく異なるため、正しい診断が重要です。
2つの病気を見分けるためには、医師による詳細な問診や身体所見の確認に加え、血液検査やレントゲンなどが必要です。関節リウマチでは、血液検査でCCP抗体などの自己抗体が陽性となることが多いですが、ブシャール結節ではこの異常は見られません。
そのため、指の関節に変形や腫れが生じた場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、専門医の診断を仰ぎましょう。
ブシャール結節の原因ってなに?
ブシャール結節でやってはいけないことには、下記の4つが挙げられます。
- 無理やり指に力を加える
- 指を頻繫に使う
- 医師の判断なしで治療する
- 炎症の原因となる食べ物を大量に摂取する
無理やり指に力を加える
ブシャール結節で痛みが出ている時期は、関節に無理な力を加えてはいけません。痛みのある関節を無理に動かそうとすると、かえって痛みが増強し、関節の変形が進行してしまう可能性があります。また、変形した関節を元の位置に戻そうと、無理やり力を加えることもNGです。
ブシャール結節によって変形した関節は、元の位置に戻すことは困難であり、無理に力を加えると関節への負担が増大し、症状が悪化する恐れがあります。
実際に私がへバーデン結節を発症した当初、自分でなんとかならないかなと無理やり力を加えてしまい痛みが増してしまったことがありました。発症当初って自分でなんとかなるんじゃないかと思ってしまうんですよね。
指を頻繫に使う
ブシャール結節の症状が現れている時期は、パソコンのタイピングなど指に負担がかかる動作は控えましょう。タイピングは、私たちが思っている以上に指に力が入っています。この負担が、症状を悪化させる原因になる可能性があります。
また、スマートフォンを片手で持つ動作も避けた方が賢明です。しかし、無意識のうちに片手で持っている方も多いかもしれません。私も無意識のうちに片手で持つ癖がついていたので意識して両手や台に置いて触れるようにしました。
もし仕事などでどうしてもパソコンを使用しなければならない場合は、医師に相談し、適切な対処法を見つけましょう。
医師の判断なしで治療する
ブシャール結節は、明確な原因や治療法が確立されていない疾患です。そのため、インターネット上などで「ブシャール結節に効く」と謳われている怪しい治療法も数多く存在します。しかし、医師の判断なしにこれらの治療法を試すのは大変危険です。
根拠のない治療法を行うことで、かえって症状が悪化し、より辛い痛みに悩まされる可能性があります。治したいという思いから、効くといわれたら試したい気持ちもよくわかります。もし、インターネットなどで気になる治療法を見つけた場合は、自己判断で試すのではなく、必ず担当医に相談してから行うようにしましょう。
医師は、その治療法の有効性や安全性を判断し、患者さんの状態に合わせて適切な治療方針を提案してくれます。私もインターネットや書籍などで気になった治療法があれば、主治医に相談してから試すようにしていました。
炎症の原因となる食べ物を大量に摂取する
炎症の原因となる食べ物を大量に摂取すると、ブシャール結節の症状を悪化させる可能性があります。特に、砂糖やトランス脂肪酸を多く含む食品は、関節の炎症を助長する作用があるため、注意が必要です。ただし、これらの食品を完全に摂取しないことは現実的ではありません。
私もお菓子が大好きなので、完全に摂取しないのは無理です。そのため、少しずつ摂取量を減らしたり、別の食べ物で代用したりなどがおすすめです。例えば、菓子類やジュースの代わりに、果物を食べるのが効果的ですよ。
私は、甘いものが食べたくなったら、バナナや干し芋を食べて甘いもの欲を満たしていました。炎症を引き起こしやすい食品の摂取は控えめにし、バランスの取れた食生活を心がけましょう。
ブシャール結節を放置するとどうなる?
ブシャール結節を放置すると、症状が徐々に進行し、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。
具体的には、下記のような問題が生じる恐れがあります。
- 指の関節の変形が進行し、ペンや箸を正しく使えなくなる
- タオルを絞るなどの日常動作が困難になる
- 職業によっては仕事を続けられなくなる(パソコン作業、美容師、料理人など)
ブシャール結節は、数年から10年ほどの期間をかけて徐々に進行します。放置すると、次第に変形が進み、最終的には指の関節が屈曲した状態で固定されてしまいます。この状態になると、日常生活動作に大きな制限が生じてしまうでしょう。
ブシャール結節は何科を受診すればいい?
ブシャール結節かどうか気になる場合は、まずは整形外科の受診がおすすめです。
整形外科医は、関節や骨の疾患を専門的に扱う医師であり、ブシャール結節の診断に必要な知識と経験を持っています。
整形外科では、ブシャール結節と症状が似ている関節リウマチなどの可能性もあるため、視診や触診、レントゲン検査などを行い、正確な診断を行います。このようにブシャール結節かどうか気になる場合は、まずは整形外科を受診し、医師の診断を仰ぎましょう。
ブシャール結節の治し方・治療法
ブシャール結節と診断された場合の一般的な治し方・治療法は、下記の通りです。
- 保存療法
- 動注治療
- 薬物療法
- リハビリ治療
- 手術療法
担当者の方針や症状によって治療の方法や進め方は、変わってきます。
保存療法
保存療法は、ブシャール結節の初期段階で行われる治療法です。この療法は、関節の安静を保ち、炎症を抑えることを目的としています。
具体的には、下記のような方法が用いられます。
治療方法 | 内容 | 内容 |
安静(固定など) | 痛みのある関節を安静にする テーピングや装具で固定し、過度な動きを制限 | 炎症の進行を防ぐ 関節への負担を軽減 症状の改善を図る |
消炎鎮痛薬 | 湿布や塗り薬などの外用剤を患部に塗布 | 炎症を抑える 痛みを和らげる |
局所のケア | 腫れや熱感がある場合は患部を冷やす ハンドクリームなどを使って軽くマッサージ | 炎症を抑える 血行を促進 関節の柔軟性を維持 |
保存療法では、安静、消炎鎮痛薬、局所のケアを組み合わせて、ブシャール結節の症状を改善していきます。ただし、症状が進行している場合や保存療法で効果が得られない場合は、他の治療法を検討する必要があります。
動注治療
動注治療は、ブシャール結節の治療法の一つで、炎症が生じている関節に直接薬剤を注入する治療法です。この治療法は、テニス肘やゴルフ肘、ブシャール結節、ヘバーデン結節など、慢性的な炎症によって痛みが生じている疾患に用いられます。
薬剤を注入することで、炎症を引き起こしている異常な血管を塞栓し、炎症や痛みを和らげます。動注治療の除痛効果は比較的早く現れ、早い方では治療から1~2週間程度で痛みの軽減を実感できることがあります。
薬物療法
薬物療法は、ブシャール結節の進行予防や症状改善に用いられる治療法です。
具体的な薬物療法には、下記のようなものが挙げられます。
- サプリメントの摂取:更年期に伴うホルモンバランスの変化を整える
- 漢方薬の摂取:体質に合わせた漢方薬を服用し、体調や血行の改善を図る
- ステロイド注射:炎症を速やかに沈静化させ、早期の症状改善に役立つ
薬物療法は、症状の改善に役立ちますが、根本的な治療法ではありません。他の治療法を組み合わせて、継続的にケアしていきましょう。
リハビリ治療
リハビリ治療は、関節の可動域を維持・拡大し、手指の機能を改善する治療法です。
ブシャール結節では、関節を滑らかに動かす滑膜の機能低下や手指の内在筋の柔軟性・筋力低下などが原因で、手指のこわばりが生じやすくなります。
このような問題に対処するため、リハビリ療法では下記のようなことを行います。
- ストレッチ:手指や手関節のストレッチを行い、柔軟性を高める
- 筋力トレーニング:手指や手関節周囲の筋力を強化する
- 可動域訓練:手指や手関節の曲げ伸ばしを反復し、関節の動きを滑らかにする
リハビリ療法は、個々の症状に合わせた内容や負荷設定が必要なため、必ず専門の医師や理学療法士の指導のもと行うことが重要です。自己流のリハビリは、症状が悪化したり、新たな問題を引き起こしたりする可能性があるため避けましょう。
手術療法
手術療法には、関節固定術、人工指関節置換術、屈筋腱部分切除術などがあります。
手術を検討する際は、担当医とよく相談し、自身の症状や生活状況、手術のリスクなどを十分に考慮した上で、慎重に決定する必要があります。
安易に手術を選択するのではなく、保存療法や薬物療法などの選択肢も含めて、最善の治療方針を見つけていきましょう。
関節固定術
関節固定術は、ブシャール結節の治療法の1つで、痛みの原因となっている関節を固定する手術です。この手術では、痛みのある関節を固定することで、関節の動きを制限し、痛みを軽減させます。また、変形した関節を固定することで、進行を防ぐことも期待できます。
人工指関節置換術
人工指関節置換術は、損傷した関節の骨や軟骨を取り除き、金属やセラミック、プラスチックなどの人工材料でできた人工関節に置き換える手術です。手術によって、変形した関節が矯正されるため、指の曲げ伸ばしが楽になり、動作が改善されることがあります。
しかし、近年では、関節固定術の治療成績が向上しているため、人工指関節置換術よりも関節固定術が選択されるケースが増えています。
屈筋腱部分切除術
屈筋腱部分切除術とは、腱鞘の中を通る屈筋腱を部分的に切除し、第二関節(PIP関節)関節への負担軽減が期待できる手術です。
第二関節(PIP関節)を曲げる働きをしている浅指屈筋腱は、二つの線維に分かれています。この手術では、浅指屈筋腱の一つの線維を切除します。もう一つの線維はつながったままの状態で残るため、手術後も指の曲げ伸ばしには問題ありません。
ブシャール結節の気になる疑問
ここでは、ブシャール結節に関する気になる疑問についてお答えします。
疑問を解消し、治療への意欲を高めていきましょう。
ブシャール結節は治る病気ですか?
ブシャール結節は、継続的な治療を行うことで症状が改善し、治る人もいます。ただし、ブシャール結節の原因は現在のところ明確になっていないため、治療に長い時間を要する場合があります。
症状の改善には個人差が大きく、なかなか改善せずに長期間苦しんでいる人も少なくありません。そのため、医師の指導のもと、根気強く治療を続けていくことが大切です。
ブシャール結節と腎臓の関係
ブシャール結節は、腎機能の低下や加齢などが原因で発症しやすいと考えられています。
腎機能が低下すると、ビタミンDの活性異常で骨の発育に悪影響を及ぼし、ブシャール結節などの形性関節症が起こりやすくなるといわれています。
ただし、これは原因の一つと指摘されているものの、明確な原因とは断定できません。そのため、あくまでも発症要因の一つと捉えておきましょう。
ブシャール結節は継続的な治療が大切
本記事では、ブシャール結節の特徴、やってはいけないことや原因、治療法について紹介しました。
ブシャール結節は、指の第二関節(PIP関節)の変形を主な症状とする疾患で、特に40代以上の女性に多く見られます。原因は明確ではありませんが、遺伝的要因や加齢、ホルモンバランスの乱れなどが影響していると考えられています。治療では、無理に指に力を加えたり、頻繁に使ったりすることを避け、医師の指導のもと適切な治療を行うことが大切です。症状の改善には個人差が大きいため、根気強く継続的な治療を行いましょう。
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